--------------------
耳管カテーテル通気法の批判
徳田 一孝
1
1岡山大学医学部耳鼻咽喉科
pp.628-629
発行日 1955年11月20日
Published Date 1955/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201422
- 有料閲覧
- 文献概要
耳管,鼓室,乳嘴蜂窠の模型の合成樹脂を使用して作り,カテーテル通気法に依る中耳換気の実験を試みた。但し耳管は相川が日本人屍を以て作つた耳管鋳型の計測値に従い,耳管内径の極端に太いもの,細いもの,軟骨部,骨部に狭窄のあるもの,狭部より彎曲せるもの,軟骨部が平常は気密に閉塞し,通気時のみ開くもの等の耳管を使用し,通気前後に於て鼓室,乳嘴蜂窠が平圧の場合,通気前に鼓室,乳嘴蜂窠が陰圧の場合,通気後に陽圧の場合に就いて,煙草の煙を通気して,耳管,鼓室,乳嘴蜂窠内気流の状態を調べ,更に模型に純粋の窒素を満し,其れに空気を通気して通気後の鼓室,乳嘴蜂窠内瓦斯の酸素含有量を微量定量し,鼓室,乳嘴蜂窠内の換気状態を調べて以下の結論を得た。
(1)一般にカテーテル通気法に依る気流は鼓室に入ると考えられて居たのであるが,私の実験に依ると,気流は耳管狭部直前迄入るのみで,唯通気に依る圧力のため鼓室,乳嘴蜂窠内の空気が收縮し,又鼓膜が外方に膨隆して中耳腔の容積が増加する,其等を補うために耳管狭部附近の空気が鼓室,乳嘴蜂窠に入るのみであり,それも通気の終る瞬間に大部分が再び外に出るのであつて,通気に依る気流は鼓室には入らぬ事が判明した。従つて通気音の大部分はカテーテル先端より耳管軟骨部の辺りで発生する事も明らかである。
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.