特集 耳鼻咽喉科診療の進歩
「オツエナ」治療の方向
鈴木 安恒
1
1慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科教室
pp.678-690
発行日 1954年12月15日
Published Date 1954/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201241
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はしがき
「オツエナ」という言葉が現在のような意味に用いられていなかつたギリシヤやローマの時代には,鼻から「臭を放つ」(ὄζω,ozō)すべての疾患が之に含まれ,それからὄζαινα(ozaena)(悪臭ある潰瘍)という言葉が生じた。その後Carl Michelは初めて潰瘍なき臭鼻が遙かに多く存在することを認め,そのころ1874年にBernhard Frànkelが鼻腔萎縮,痂皮形成,悪臭,の3徴候を有し潰瘍を伴わざる疾患をOzaena simplex sive catarrahlisとして鼻における其の他の悪臭を有する疾患,例えば梅毒や癌等と区別するに至つた。
従って其の当時に至る迄の治療法は全く雑然たる色々の種類の疾患に混同せる治療法が行われ,現今の意味のオエツナという病気に対する治療法とはいえない。呪文のようなものが用いられているかと思うと,色々な内服藥等が用いられ,又上顎洞オエツナ(Kieferhöhlen-ozaena)というのがあつて自然孔から洗淨したり,カリエスの歯牙を抜歯して排膿したりしている治療法のある所をみると,この中には悪臭ある歯性上顎洞蓄膿症も含まれていたようである。私は,こゝでは現在の意味におけるオツエナのうつりかわりについてのみのべる。
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