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緒言
従来結核性脳膜炎は好んで幼年者を侵し,其の予後は全く不良にして施す術もなく鬼籍に入るのを傍観せねばならぬ状態を続け,その後遺症の如きは考える余地もないもので,一旦本症に罹患すれば必ず死あるのみと断定せられ実際其の樣な結果であつた。然るに1943年Wachsmanに依つてストレプトマイシン(以下ストマイ)が創製せられ本剤が臨床上結核に著効ある事が判つて,其の適応症の第一に結核性脳膜炎が挙げられ,今日本症に対して誰人もストマイに依る治療を最善の治療として実施している。結核性脳膜炎に対する本剤の効果は文献によれば,早期に使用すれば自他覚的症状は一応軽快し進行停止の状態となり,其の治癒すら期待し得る事が明かとなつた。治癒率20%が其の間の実情を物語るもので,今後に大きい希望が持てる点であり,結核性脳膜炎の臨床像は著しい変貌を来しつゝある。今日本症の治療に対してストマイに依る治療が徹底的に実施されている事は首肯し得るけれども,ストマイの応用にも或る限度を覚える樣に思われる。ストマイ使用時に起る副作用が難聽,耳鳴,眩暈等主として耳科学的分野に於ける症状を呈するために吾等耳鼻咽喉科専門領域に特別の関心を惹き種々研究されている,私共が昭和27年11月より昭和28年8月の間に中村臨床を訪れた結核性脳膜炎の治療中又は治療後に聾或は高度の難聽を訴えたもの,又は自覚的に難聽を訴えないが耳鳴のみ訴えたもの計7例につき種々検査する事が出来たので,少数例であり統計的観察を行う事は出来ないが,その臨牀症状を述べ1,2の点に就て考察を加えたいと思う。
FUKUSIMA says that in order to determine the etiology of loss of hearing as after-effects of tubercular meningitis following factors should be considered: 1) Blood stream infect-ion of the inner ear. 2) Inner ear infection of meningeal origin the result of peripheral com-plication of existing tubercular encephalitis. 3) Symptom complex of the focus of encepha-litis being situated in proximity to the hearing center. 4) Streptomycin toxicosis on the inner ear or the eighth nerve.
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