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所謂術後性副鼻腔嚢腫の成因に就て
柴田 秀二
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1長崎醫科大學耳鼻科教室
pp.320-321
発行日 1953年7月20日
Published Date 1953/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200921
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術後性頬部嚢腫は昭和2年故久保教授により發見命名せられて以來既に稀でない疾患となつたがその原因に就てはまだ推測の域を脱しない。本疾患は最初發見せられた際は腫脹が頬部に及んでいたので頬部嚢腫と名付けられたが,その成立が上顎洞のみでなく,上顎洞から篩骨蜂巣に進入せるもの(又この逆のもの),篩骨内に獨立して存在するものが認められ,又前額洞に發見した報告も有るし2),理論上何れの副鼻腔にも發生する可能性があり頬部に腫脹の及ばないものも有るので,私は術後性副鼻腔嚢腫と呼ぶ方が妥當と考える。本症は臨床症状が副鼻腔炎の再發乃至腫瘍と酷似するので,時に臨床家の診斷を迷わしめる疾患の一つである。特に歯科,外科醫により單なる頬部膿瘍として治療を加えられ時日を遷延するものがある。
又飜つて慢性副鼻腔炎の治療は化學療法の進歩した今日に於ても尚解剖學的な複雑さと本症の病理學的特異性のために,保存的方法による根治は尚充分には期待出來ず,大多數のものでは手術的療法が避けられない現状にあるので,根治手術の續く限り本症は永久にその跡を絶たずに現われるものと思われる。我々耳鼻科醫の手術對象となる疾患中,副鼻腔炎手術は最高の頻度を占める關係上,その原因の究明とその防止に對する注意は副鼻腔の手術に當り最も重要と思われるので,私は最近年4間に經驗した本症の中から病理組織學的検索を行いその成因に就て考察致し度い。
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