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TALK・トーク・とーく
伊藤 晴美
,
甲斐 聖
pp.870-871
発行日 1989年10月10日
Published Date 1989/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207832
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当たり前でたいへんなこと
いま地域に根ざした医療活動の大切さが強調されているが,看護婦も病院内で患者と向かい合っているだけではなく,保健婦的な視点で患者を生活の場から見つめ,援助することが必要なんだと常に感じる。しかし,患者が医療機関を訪れるときというのは,たいてい積極的な治療が必要な状態のときで,医者も看護婦も病状の変化ばかりに目がいってしまい,なかなか社会的な背景まで目がゆかない。患者のほうもよほど私たちと親しくならない限り,日常生活のことまでうちあけようとしないし,むしろ生活に問題がある場合などは,それを隠そうとすることが多い。たまに,気になる患者には休みの日など利用して家庭訪問に行ってみたりするのだが、その帰り道では,いつもきてよかったという思いになる。入院中の生活ではどんなに苦労しても見えなかった生活が一目瞭然に見えるからだ。もちろん1回の訪問ですべてを知ることは不可能だけれど,あれこれ想像して悩んでいたことのほとんどは解決する。退院前にすべての患者の家を訪問し,その生活ぶりを把握することができたらどんなにいいだろうと思うけど,そんな条件の整った病院なんて数えるほどだと思う。すべての外来患者の生活を把握しようと思ったら……。そんなわけで必要性を感じながらも十分なアプローチができずそのことにジレンマを感じている看護婦は少なくないと思う。
そんななかで看護の連携ということがよくいわれる。
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