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耳嗚はその原因が單一でなく,現今尚,不明の域にある。之は眞の耳嗚が患者自身の自覺的のものであるので,研究方法も制限せられ,其の治療効果も他覺的には知る術のない事が大きな原因をなしている。我が教室に於ても,數年來,耳嗚に就ての種々なる觀察を行い耳嗚發現に就ての一應の見解を持つに到つた。耳嗚の成因に就ては尚不明であるとは云え,大別すると現在まで2種の假説が提供されて來た。其の1つは,聽覺系組織の異常興奮であるとなす説であつて,最近の耳嗚治療に就ての文献であるFowler, Atkinson,勝木氏等の説も皆,此の説に屬していて一般にも最も普及された説である。我々は他の1つの流れの説,即ち傳音系組織異常説を信ずるものであつて,耳周圍に音源を假定し,耳嗚には迷路周圍の生理的な傳音環境の變化によつて此の音源よりの雑音が聽域に入るに至つたものと,その場合の音源と思われる組織夫れ自體の振動増強により聽域に入るに至つた雑音との2つの起り方がある(後藤説)との見解に立つている。又一方,耳嗚の成因の追求には,種々の治療法に對する反應を觀察して行くことも當面の捷徑であると思われ,此の觀點から種々の治療法を試みているが,曩に翼口蓋神經節麻醉法を發表し,或る程度の成果を得た事を報告した。本論文もその意味に於ける耳嗚研究の1篇である。狭義の耳嗚を音源性(機能的)なものと,傳音性(器質的)のものとに大別し,後者ははその障碍部位によつて後迷路性,内耳性,中耳性,耳管性,外耳性とに分たれる。後迷路性といふ中には,音源性のものも含まれる傾向があるが,音源は必ずしも迷路の後方とは限らないので茲では專ら傅音障碍性の器械的な障碍に解釋し度い。現在まで用いられている藥劑の中,効果ありとされているものは,何れも腦血管擴張性の藥劑でアミールニトリット,ハセスロール,鹽酸パパベリン,カフェイン等である。今回は之等の藥劑に比して,別個な作用機轉を有するアムモニウム鹽が如何なる反應を示すか觀察を試みたのである。
YAMANOBE and associates, for treatment of tinnitus aurium, tried administration of ammonium chloride (3-4 gms per day, divided into 3 equal doses) by mouth and, tetraethyl-ammoniumbromide (1-2 amp. per day) by sucutaneous injections. Results with the former were found to be somewhat favorable but, with the latter, ineffective. They believe that ammonium chloride reacts as stimulant to cardiovascular center and that, it also posesses a property, like curare, mildly anes-thetic; by chemical changes into that of a idity within the system, it renders other tissues thereby, to become less hygroscopic. This agent is not toxic, may be given by mouth and continuously.
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