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はしがき
癲癇に就ては古くより,その本態に關する探究と共に種々の治療注が試みられて來たが,尚未知の點が多く跛行的なものであつたと云えよう。從來癲癇を所謂眞性或け症候性癲癇として一括して論じて來た爲,その治療法も殊に外科方面では單に痙攣發作の消失のみを對象として,精神方面の症状の觀察を缺き,その效果の判定には必ずしも當を得たものであるとは言えない。
然るに近年腦波の臨床的研究と共に癲癇の病態生理に關し劃期的進歩が見られたのみならず,その診斷,治療效果,豫後判定と言う臨床的實際的面に最も大きな輝しい寄與を爲すに至つた。殊にGibbs及Lennox等によるところ多く,氏等は癲癇を腦波のアリトミイなりとし新しく分類をしている。これは癲癇患者の示す異常腦波所見による分類であつて,臨床的發作形態とも密接な關係があると言つている。即ち大發作,小發作,並に精神運動發作等に大略分類しているが,勿論此の三型のみでなく,これを基礎として相互に移行するものが有り,絶對的なものでないが,此の腦波の分類を基礎として癲癇の治療上にも劃期的な進歩が見られた。飜つて交献を獵渉するに癲癇の外科的治療は今迄,種々行われているが癲癇に對するPrefrontal Lobotomyの治療效果に就ては從來餘り報告無く,我國では昭和21年,中田教授が油木博士と共に報告し,その後,二三の報告が有るのみに止つている。吾々は東大腦研究所島薗博士の好意に依り,腦波の檢索を行つた結果,Gibbs及Lennox等ぶ言う如き分類に適合する定型的な症例は得られなかつたが,臨床症状と合せ參考として所謂眞性癲癇に於ける一過性,並に持續性精神症?並に痙攣發作等にLobotomy が如何なる變化を與えるかと言う問題をとり上げて考察を試みた。
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