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緒言
九大耳鼻咽喉科教室1951年度1ヶ年間の外来患者中食道疾患は第1表に示す如くであつた.この食道疾患のうち最も重要な位置を占める食道癌の根治は未だ極めて困難であつて,其の治癒率は他器官の癌腫のそれに比し問題にならぬ程著しく劣つている.然してその治癒率を向上するには放射線療法或は最近進歩した外科的療法の何れに依るにしても早期発見が先決問題であり唯一の鍵である.このためには食道癌の初発症状を究明し,この初期症状に一致する自覚症状に気付いた時期に,直ちに初期の診断には欠くことの出来ない食道鏡検査を必ず実施し,微細な粘膜に於ける病変をも見逃さない樣にせねばならない.然してこの時期に於てはX線検査の所見は単に従としなければならない.
食道癌の初発症状は私のさきに発表したものにその後の症例を加えた67名に就ての愼重な調査結果では第2表の如くであつて,かかる症状は慢性食道炎或は食道神経症の際にも認められることは1951年度の食道鏡並びにその他の検査により診断を確定し得た患者に就いての初発症状(第2表)及び主要自覚症状(第3表)の統計が示す如くである.斯くの如く自覚症状によつては疾患の推定或は鑑別は困難であり,又食道鏡検査によつても容易に診断を下し得ない場合もあるに拘らず従来かゝる症状を訴へる患者に対して,単にX線検査のみにより,或は唯一回の食道鏡検査の結果癌性病変を発見しなかつた場合は,多くは慢性食道炎或は所謂食道神経症として爾後の経過観察を怠り,又必要なる治療もなをざりにし勝であつた.かゝることが食道癌の早期発見を妨げている一因とも考えられ,他方又慢性食道炎も軽視されているので,慢性食道炎について認識を深める意味に於いて自ら観察した所見を発表する次第である.
MUKUNO makes a statistical review of esoph-ageal afflictions which were found as cases from the patients who had made visits to the Ear, Nose and Throat Clinic, the outpatient department, of Kyushu University during the fiscalyear 1951. The discusson on the subject is divided into the disease, sex, early symptoms and compla ints From among these 16 case (14.3%) of chronic esophagitis are selected here for presentation gi ving a special attenton to their etiology, sympto ms and signs, the diagnosis and the treatments which were co-nsequently abopted. when esophageal lesione are found to be leukoplakia, infla mmatory edema or ulcers the author states that there is a need of careful study and observati on on the progress of the disease in order that cancerous changes may be detected in their beginning stage.
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