胃と腸ノート
慢性食道炎の概念―食道粘膜小顆粒性所見と食道粘膜生検3点法
酉家 進
1
,
川井 啓市
1
1京都府立医科大学第3内科学教室
pp.1405
発行日 1974年11月25日
Published Date 1974/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112129
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内視鏡機器の進歩に伴ない,食道癌をはじめとする各種食道疾患に対する内視鏡診断学が漸次確立されつつあり,食道炎においても第14回日本内視鏡学会シンポジウムにてとりあげられ,検討がなされた.そして食道炎,ことに逆流性食道炎の所見として食道粘膜の発赤(線状,樹枝状,地図状など),びらん,白苔などがあげられ,その診断は内視鏡的には比較的容易である1).しかしこれらの変化は生検組織にみるように好中球浸潤を中心とした急性炎症性変化であり,食道炎における慢性変化については内視鏡診断学上,まだ十分な検討がなされていない.
食道の内視鏡観察上,少数のロイコプラキー,小顆粒の存在はほとんど全例にみられ,われわれはこのような小顆粒の存在,粘膜の肥厚感,粗大顆粒,ロイコプラキーなどの所見を食道粘膜の粗糙
性所見としてとらえ,その程度をⅠ~Ⅲ度に分類している.この所見は加齢と共にその程度が強くなっており,粗糙性所見のない0度は若年者のごく少数例にしかみられない.一方,このような症例に食道3点生検(食道上部・中部・下部より生検)を行ない,その組織所見をみると,炎症性細胞浸潤の出現頻度は粗糙性所見が高度になるにつれ,高くなっている.しかし剖検材料の検討においては加齢と細胞浸潤の出現頻度とは相関せず,粗糙性所見は一方で加齢による影響をうけ,他方,加齢と関係なく炎症性変化の要素をもっていることがうかがわれた.
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