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トリコモナス腟炎の臨牀的観察—第1編 臨床統計
西島 明
1
1日本醫科大學産婦人科教室
pp.279-282
発行日 1949年7月10日
Published Date 1949/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200229
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緒言
トリコモナス腟炎(以下ト腟炎と略す)は1916年Hoehneが初めて記載したものでDonne (1837年)によつて發見されたTrichomonas vaginalisの腟内寄生を本症の原因であるとしてTrichomonas—Colpitisと命名したが,腟トリコモナス(以下腟トと略す)の病原性はなお確定していない.然し臨牀上本原虫が存在する時には腟帯下は帶一般に多量且つ膿性稀薄液状で清淨度も極めて惡いものが多く.又屡々泡沫性を帶び,患者は頑固な帶下感及び往々外陰部掻痒感を主訴とする.又腟炎を惹起している腟帶下の大多數に本原虫を檢出する事,原虫驅除に成功した時は炎症の頓挫を來し,帶下の性状も亦良好に趣く事は事實である.而て本原虫は世界廣く分布し,共の罹患率は文献に依れば大體20%前後のもの多く,特に帶下を主訴とする患者では平均30%前後の高率に本原虫を検出している.又腟内容の清淨度と卵巣機能との關係が重視され,本症も單に腟トの増量乃至共存病原菌の増殖によるのみではなく,複雜な要因によつて惹起される事も明白となり,更に最近では腟上皮細胞の各種疾患に於ける形態學的變化,細胞病理學的推移と云う事が新局面を開こうとしている時,卜腟炎と腟粘膜上皮細胞の形態學的變化との關係も亦興味深い事である.
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