臨床講義
Hunt氏症候群とBell氏麻痺
森本 正紀
1
,
中田 龍夫
1
1新潟医大耳鼻科
pp.298-302
発行日 1952年7月20日
Published Date 1952/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200702
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顔面神経麻痺の患者は耳鼻科クリニツクを訪ねることが多い.それは顔面神経が,延髄を離脱してより頭蓋骨外に出ろ迄の問,走向の大部分が、即ち内耳道から莖乳孔に至る可成り長い経路が,全く聽器骨内に在ると云う局解的関係に因り,耳炎性の顔面神経麻痺は勿論のこと,(顔面神経麻痺を以下顔神麻痺と略記),その他の顔神麻痺でも,側頭骨内経路の何処かに病巣のある場合が甚だ多いからである.第1表は,過去15年間に私共の取扱つた顔神麻痺の疾患別一覽である.この表では,耳性麻痺が断然多く,Bell氏麻痺が之に亞ぎ,Hunt氏症候群及び其の他となつておる.耳鼻科臨床に於ける集計であるから,耳性麻痺の多いのは当然の帰結といえよう.
耳鼻科以外のクリニック,例えば精神科あたりでは,この点どうなつておるか.試みにCowthoneの末梢顔神麻痺270例の統計を引用してみると,Bell氏麻痺 157例 Hunt氏症候群 13例 外傷性麻痺 55例 腫瘍に因るもの 9例 耳性麻痺 30例 其の他 6例となつており,何れにしても末梢顔神麻痺では,外傷を除くと,耳性麻痺,Bellの麻痺,Huntの症候群,この3疾患が大きな立場を占めておる.耳性顔神麻痺に就ては先日諸君に講義した.それで今日は,Hunt氏症候群とBell氏麻痺について話をする.因みに,Huntの症候群は従来本邦では耳性帯状疱疹と慣称され,Bellの麻痺はロイマチス性とも本能性麻痺とも呼ばれておる.
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