臨床講義
化膿性中耳炎と含氣蜂窠
長谷川 高敏
1
1大阪市立医科大学
pp.14-16
発行日 1951年1月20日
Published Date 1951/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200444
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病氣の成立には必ず内因と外因があり,内因の如何,外因の如何が相俟つて病氣の経過を左右する.病氣が軽くすむのも,重くなるのも,又早く癒るのも永びくのも,結局内因外因両者の配合如何によるのである.化膿性中耳炎に於てもこのことがよく認められ,運命とも称うべき両者の配合の力を如実に感知することが出來る.中耳炎の際,その外因としては主として起炎菌の如何が問題となり,内因としては全身状態の如何,体質の如何,中耳の局所的状況の如何等が問題とをる.今日は2人の患者を供覧し,化膿性中耳炎とその内因の1つである中耳し局所的状況の関係について述べよう.
第1例 この患者は23歳の男学生で,外來を訪れた主訴は左側の耳痛である.これは3日前から起つたもので,昨日からは耳漏も現われている.ところが,この人は左の耳ばかりではなく右の耳も健常ではない.すなわち,約10年前に右側中耳炎にかかつて耳漏を起し,医療を受けているが未だに癒らない.患者の家族歴には異常がなく,両親,兄弟共に健康であり,遺傳的疾患も認められない.既往歴にも特述すべきことなく,前述の右側中耳炎をわずらつているほか生來頑健で著患を知らない.筋骨頑丈で胸腹部檢査に異常なく,また諸反射正常である.血液,尿所見にも変りがなく,鼻咽喉にも著変を認めない.
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