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所謂扁桃腺周圍膿瘍に於て,膿瘍の發生する位置は,その名の示す如く扁桃腺被膜外であつて,被膜と上咽喉收縮筋との間の結締織によつて粗鬆に連結されている間隙であることはすでに承認されており,各國の專門書を繙くも凡てこの樣に定義されている。又周圍膿瘍の發生機轉については主として上扁桃腺窩との關係があることも亦一般に認められているところであつて,上窩深部の炎症が先づ被膜を通つて扁桃腺周圍に及び,ここに膿瘍を形成するものであると看做されている.この定義及び發生機序に就てはさしたる疑問をさしはさむ論者もなく今日に至つている.しかし私は最近この膿瘍の發生部位に對して疑義を抱くようになり,檢索を進めたところ扁桃腺内膿瘍なることを闡明し得たので茲に公表する次第である.
周知の如く,扁桃腺周圍膿瘍に對する治療としては,以前は專らChiari或はBulatnikow等による切開排膿法が行われていたが,其後所謂膿瘍扁摘が行われるようになり,現在に於ては切開法よりも扁摘が本症治療の常道であるとの感を抱かせるようになつており,私も事情のゆるす限り膿瘍扁摘を行つている.しかし,この手術は實際行つてみると一部報告者が唱えているように簡單にはゆかぬ,のみならず殆んどすべての手術例に於て,自分には技術上どうしても處理出來ぬ個所があり,不快に思うのが常であつた。普通の扁摘手術の場合にては,前口蓋弓の上部に於て扁桃腺被膜を出し,この被膜外面に沿つて剥離を進めて行けばたやすく扁桃膜上極が出て,更にそれに沼つて下方に剥離することが出來るが,この膿瘍扁摘の場合には前口蓋弓と被膜間に於て剥離を進めて行つても容易に上極に達することが出來ぬ.上極部に近づくに從つて被膜が厚く且つ周圍組織との癒着も高度となり剥離が益々困難となつて來る,此際この硬い瘢痕樣組織の外側剥離を斷念して,この組織を切開すれば膿瘍腔に達し排膿を見るのが常である.膿瘍腔に面している部分は剥離する必要がないから膿瘍腔より下方の扁桃腺被膜を剥離すれば扁桃腺は比較的容易に摘出される.かかる膿瘍扁摘を幾例か行つている内にいつとはなしに不思議に思う樣になつたのは,被膜外側に沿つて愼重に剥離を進めて行くのに何故容易に膿瘍腔に達して排膿を見ないかということである.本症に於てその定義の如く膿瘍が初めから被膜外に形成されるならば被膜外面に沿つて剥離して行けば容易に排膿されねばならぬ,われわれが膿瘍扁摘を行うのは多くの場合化膿の極期であるから膿瘍腔の周壁は未だ瘢痕組織化しておらぬ筈である.
Sasaki says that, while peritonsillar abcess is generally recognized as the result of spread of infection through the tonsillar capsule into the areolar space which is situated between this ca-psule and the superior constrictor muscle, yet, in practice with tonsillectomies on abcess cases the attempt in reaching the abcess cavity by dis-secting along the outer side of the capsule will be met with a great difficulty or practically imp-ossible.
Strong adhesions to the surrounding tissues at this area will not permit it. From the fact that the enclosed pus will be freed only when the ca-psule is incised; and the tonsil removed in this condition will invariably present its parenchyma on the surface that has been facing the abcess cavity, it is inferred that the site of the ab-cess might be intra-capsular, This assumption is proven to be correct by histological studies on tonsils that were removed in 9 cases during the abcess stage. In spite of the fact that acute ton-sillar abcess and peri-tonsillar abcess are both recognized and differentiated by numerous auth-ors as two separate entities, the author regrdas them as identical affliction, the acute tonsillar abcess. A change in the term to that effect is also proposed.
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