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扁摘後の急死症例
岸 澄三
1
1紀北病院耳鼻咽喉科
pp.212-213
発行日 1948年11月1日
Published Date 1948/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200096
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序言
扁摘後の合併症に關しては多數の報告が見られるが、扁摘後の死亡例に關しての報告は極めて稀である。事實我々が扁摘を日常施行して不幸の轉歸に遭遇することは稀有なることに屬する。余の檢索せる範圍に於ては、扁摘後咽喉頭「ヂフテリー」症を併發して扁摘後40日にして死亡せる田中の1例、自家中毒と思はるる西端・中島の各1例に過ぎない。此等不幸の轉歸の發生原因は手術操作に基くものと、扁摘後の菌感染とに分けられる。即ち手術操作に關しては出血死であつて、扁摘手術に於ては出血は最も注意せられ、手術操作の種々なる注意及び改良も全く出血防止の點にある。扁摘後の出血死に就ては時に耳にするも之に關する報告は皆無であつてどの程度にあるか不明であるが、之は手術操作を諸注意を守り入念に行へば避け得るものであつて、私は未だ出血死に遭遇した經驗はない。菌感染による合併症の報告は極めて多いが殆んど治驗例であつて、不幸の轉歸をとれるものの報告は殆んど無いと言つてよいが、合併症發生の頻度より考ふれば、出血死によるよりも菌感染による合併症により死亡する例が多いのではないかと考へられる。
余は、余の外來に於て扁摘後何等合併症の發生もなく、而も扁摘後3日にして急死せる例を經驗した。果してこの死亡が扁摘に基因するものなりや、將又扁摘に關係なく突發死を惹起せるものなりや未だ疑問に思ふものであつて、先輩諸兄の御教示を仰ぎたいと思ひここに報告する次第である。
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