論説
動脈注射療法の有効機序に就ての一考察
仁保 正次
,
加藤 彬芳
2
2川崎大師病院
pp.174-178
発行日 1948年8月1日
Published Date 1948/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200088
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最近の化學療法の進歩は化膿性炎症に對する治療方針を變更せしめた樣な感が深い。殊に耳鼻咽喉科の樣に其の大部分が化膿性炎症である我領域では更に其感が深い樣に思はれる。中山教授は昭和15年に現在の治療界の寵兒、動脈性衝撃注射療法を創始せられた。私も昭和19年以來、島田氏(横須賀海軍病院)の頸動脈注射療法の語を聞いて後數百例に就て、我々の遭遇した炎症性耳鼻咽喉科疾患に就て追試した。其効果は勿論奏効しなかつたものも多々あるが、全般的に見て驚くべきものがあづた樣に思はれる。共の中私の提唱する側頭骨炎40餘例に就ての報告は昭和22年3月の横濱に於る東京地方會で發表した。然し昨年中の東京地方會及び今年3月の横濱に於る東京地方會で動脈注射が靜脈或は皮下注射に勝る理由を判明させずに施行すると謂ふお叱りを颯田教授より再三お受けした。今年3月横濱醫大に於る中山教授の講演の際に中山教授にお聞きし、又其の著を見ても濃厚藥液の病竈部に流入する事よりも寧ろ高張糖液に因る組織球貪食度の亢進に重きを置かれてゐる樣に思はれる。今年3月横濱に於る東京地方會での柏戸教授の「みなづち」現象の應用も私共の臨床實驗によつて得た事實を充分には説明してくれない樣である。
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