論説
喉頭淋巴循環系の形態學的研究
佐々木 寬
1
1九州大學醫學部
pp.92-97
発行日 1948年6月1日
Published Date 1948/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200066
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緒言
我等身體に於ける淋巴循環の生理的意義の重要なるは論を俟たざる所、而して亦一局所に原發せる疾患の蔓延擴大に際しても其關係する事重大である。されば之が智識は一局所疾病の治療に有意義なること贅言を要しない。然るに喉頭領域に於ける淋巴循環系に關する研究論丈は現在に至るも實に寥々たるもので、最も古い報告はMascagni(1785)に始まる樣であるが之は極く簡單な記述に過ぎない。其後Teichmann(1861)は喉頭粘膜組織に於ける淋巴毛細管の分布に注意してゐるらしいが、其原著を見得ざるを遺憾とする所である。かのLuschka's "Def Kehlkopf"(1868)の中の之に關する記述はTeichmannに據るものの樣である。Sappey(1874)は彼の名技である水銀注入法に依る有名な淋巴系の研究で喉頭淋巴毛細管の一般配列を其水銀注入状況より追及し殊に淋巴管との關聯、周圍の淋巴腺に對する最終分布をも記述してゐる。次でPoirier(1887)はSappeyの報告を本質的に確認すると共に更らに補遺する所がある。即ち喉頭に於ける淋巴管網の發達状況は聲帶部を境として其上及び下部兩領域に於て異なり、前者の粘膜下層には豊富なる淋巴管網の形成を見るが、後者粘膜下層にては其管網の發達弱く、只其上方より氣管の方に下るに從ひ漸次強くなつてゐると述べてゐる。
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