--------------------
思いつくまま(49)
後藤 甫
1
Goto Hajime
1
1鳥取大学医学部泌尿器科学
pp.443
発行日 1966年4月1日
Published Date 1966/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491204351
- 有料閲覧
- 文献概要
大東亜戦争の戦勢が不利になつてから,われわれは昭和20年9月に満3年で繰上卒業,10月には軍隊にいくことに内定し,休みも返上して頑張つていた。思いもかけず終戦になり母校がなくなつたので,そのなくなる直前に仮卒業証書をもらつて引揚げてきた。帰つてみて驚いたことには,われわれの年次の者は昭和21年9月まで卒業延期だから,大学にもどれとのことだ。その上に厚生省の指定する病院で半年間のインターンをしてから,国家試験に合格しなければ医師の免許証はやらないとのことだつた。あわてて最寄の大学で相談し,また文部省にきいても,仮卒業証書のある以上は転学の必要はないとの返事だ。しかしやつかいなことに,外地の大学で台北と満洲は仮卒業であつたのに,京城は3年の修了証書をだしたらしい。3大学の歩調がそろわないので話がもつれ,気分のすつきりしない毎目を送つていた。そうこうするうちにボツボツと母校の恩師が引揚げられ,いろいろと折衝していただいたあげく,そのままで昭和21年9月卒業を認めるということに決着した。ようやくインターンを受ける資格ができ,指定された病院にいつてみても,全然受入体制が整つていなかつた。どの科にも続続と復員軍医が入局してくるので,われわれの扱いは本当のところやつかいだつたらしい。じやまだから後の方に立つて診察のやり方をみておれといつた調子で,無駄な数カ月を送つてしまつた。
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.