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I.はしがき
元来梅毒血清反応はWassermann以来抗原として病原体を使用せず臓器の滲出液を使用した補体結合反応に種々の改良を加えて来たもので,高度な成績を示すとはいえ完全なものではない。1942年PangbornによりCardiolipinが単離されて以来特異度や鋭敏度もいちじるしく上昇しWassermann反応の方式も深く研究され最終に近ずいた観がある。しかし現在の梅毒の診断や治癒判定にはなお不満の点も多い。反応が鋭敏となれば旧反応では陰性のものが陽性として浮び上って来るわけで,例えば生物学的疑陽性反応や,梅毒治療にあたつて十二分と思われる駆梅を行なつても尚長期間この反応が陰転しないこと,また潜伏梅毒でなんら臨床的に梅毒の症候がみられない症例では梅毒血清反応のみで診断することが多く生物学的疑陽性反応との鑑別が困難となっている等が主な問題点となつている。
したがつて誰れもが抗原としてTreponema pallidumを使用することを考えないわけではなく,古く赤津及野口両氏(1)等の実験もあるが,現在もつとも特異度の高い優れた方法としてNelsonらの発表がある。Nelson等のTreponema pallidum immobilization test2)(TPI test)は多くの追試があり優れた方法であることはすでに実証され実用化してきているとはいえ,その手技は繁雑で,改良されつつあるが,未だ我が国では一般検査として行なうまでにいたつていない。その後TPIA,TPA,TPCF,RPCF,FTA等の諸反応が相次いで発表され一般にこれらの反応が従来の脂質抗原を使用する場合より特異度が高いとされている。
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