研究
梅毒血清反応の検討—特にRPCFを中心として
後藤 大九郎
1
1佐世保市立市民病院臨床検査科
pp.437-440
発行日 1969年5月15日
Published Date 1969/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542906427
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緒言
Pangbon(1941)により発見されたCardiolepin-Lecithin(以下CLと記す)が,一定の力価をもつきわめて安定した梅毒抗原としてその価値が認識されるや,従来の補体結合反応や沈降反応の創案者はこぞって本抗原を採用し,その精度が一段と優れていることを報告した.わが国においては緒方1)により,CL抗原を用い抗原抗体最適比を応用した抗原減量法が発表され,理論的にもまた比較実験においても最もすぐれた術式として,凝集法ならびにガラス板法とともに一般に常用されている.
CL抗原の出現により梅毒血清反応の鋭敏度ならびに特異度は西村2)の報告するごとく,単なる牛心抽出液を抗原としたときに比し,きわめてすぐれたものとなった.しかし梅毒以外の疾患に非特異的な陽性反応を呈する率は低下したとはいえ,松橋3)は癩,エリトマトーデス,原発性非定型肺炎,リウマチ性疾患などにおいて相当数の偽陽性を呈するものがあり,これら梅毒とは無関係に偽陽性を呈する反応を生物学的偽陽性反応(BFP)とよび,これにはほとんど生涯続く慢性のものと,急性疾患のとぎ一過性に偽陽性となるもののあることを指摘した.BFPについて松橋3),水岡4),勝又5),富沢6)らはCL抗原は病原体そのものからとりだしたものでないためBFPはその発現必至であり,このBFPを鑑別する意味において,Treponema-Pallidum(以下TP)そのものを抗原とする術式を用いて決定すべき必要を強調する.
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