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Gilchrist氏人工膀胱の1例
伊藤 庸二
1
,
伏屋 惇
1
1慈恵会医科大学大井外科教室
pp.374-376
発行日 1955年6月1日
Published Date 1955/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201444
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悪性腫瘍等の膀胱疾患で上部尿路変更を要する場合には,尿管皮膚移植が最も容易且安全であるが,身体の両側から絶えず流出する尿を仕末する不便は避けられない。両側腎からの尿を一個所に集め一定時間潴溜させる目的には,肛門拮約筋を利集用出来るS字状結腸及び直腸は誠に都合が良い。殊に近年,抗生物質の発達に伴い尿管腸吻合術が容易になつたので,盛んに此の手術が試みられ,簡便な吻合法も種々発表されている。然し此の手術ではその重大な合併症である吻合部狭窄及び上行感染を完全に防ぐことが出来ないので,糞便に汚染され易い結腸及び直腸を膀胱の代用とすることは,生来の括約筋利用という利点があるに拘らず,なお満足すべき方法とは云い難い。又腸管からの尿成分再吸收は血中電解質の平衡を障碍して所謂過塩素血性酸血症を起し,腎機能不全があれば更にこれを助長して予後を不良ならしめる1)2)。膀胱全剔除術予後不良の原因も此の点にあると云われる3)。小腸を利用するナイフオン膀胱または盲腸膀胱には血中電解質平衡障害は少いと云われるが,括約筋を欠くため尿の長時間停滞がないので採尿器を装用しなければならないと云う不便が伴う。1950年Gilchrist6)7)は括約筋の代用としてBauhin氏回盲弁の利用を考え,空置した盲腸及び上行結腸を膀胱代用とし,回腸の一部を尿道代用とする手術法を発表した。
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