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腎結石の場合の部分腎切除術
腎結石の手術術式として從來施行されている方法は,腎盂切石術,腎切石術及び腎剔除術の方法であつて,結石介在部腎實質のみの部分腎切除術は一般にあまり實施されていない。しかし實際問題として腎杯結石で,その腎杯は相當に腎組織の障碍を伴つているが,他の部の腎實質にはこれと言う變化のない場合には,その腎杯部のみを結石と共に除去出來れば,再發を未前に防ぐと言う意味から言つて理想的である。Abeshouse及びLermanはこの腎結石に對する部分腎切除術を17例の腎結石に施行して滿足すべき成績を得たのを機會に,文献から同樣に腎結石の部分腎切除術の施行例の193例(自己經驗の17例を含めて)を集めて種々の方面から本術石を從來の方法,即ち腎盂切石術,腎切石術及び腎剔除術と比較檢討して見た。その結果彼等は部分腎切除術は從來の方法よりも次の樣な色々の優れた點のあるのに氣がついた。1)手術死亡率の點で部分腎切除術は2.58%(5例)であるのに,腎盂切石術は2.4%,腎切石術は9.8%,腎別除術は6.3%である。2)手術後の合併症も部分腎切除術では比較的少ない。即ち,a)二次出血は本法では3.1%(6例)であるのに腎盂切石術では4%,腎切石術で10.5%であり,b)尿瘻形成は本法では1.5%(2例)であるのに腎盂切石術では4.1%,腎切石術では12.5%であり,c)結石の再發は本法では2%(4例)であるのに腎盂切石術では10.9%,腎盂腎切石術では15%,腎盂腎切石術では24.7%の高率である。3)本法の適應症は上腎杯或は下腎杯に限局しており,しかも同腎部を殘存腎の血行を障碍しないで除去し得る場合である。193例の中107例(55.4%)は下腎杯結石である。そして本法は兩側腎結石で1側の半分は殘さなければならない場合,他側腎障碍のある場合などは本法によつてのみ患者を救い得る。4)本法の禁忌症は,a)先天性異常腎で血行異常の場合,b)結石腎全體に腎實質障碍がありその機能が障碍されている場合,c)腎周圍の癒着の甚しい場合,d)同腎に腎結核或は惡性腫瘍の存在する場合,等である。5)本法の實施上必要なことは,a)腰部切開で手術を進めるのがよい,b)腎を完全に遊離し露出すること,c)注意深く莖血管を遊離し,出來れば切除すべき部位のみへの動脈を見出してこれのみを結紮すること,d)完全に病巣部を切除すること,e)創面腎は完全に閉鎖すること,f)腎固定術を施して,腎床部にドレンを挿入すること,等である。
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