--------------------
海外トピックス
pp.300-301
発行日 1950年7月1日
Published Date 1950/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200375
- 有料閲覧
- 文献概要
リンパ球と形質細胞との抗體産生
50年前に朱で刺青とした男の剖檢に當つて,腋窩リンパ腺にたお朱の粒子の止まつているのを見出したVir-chowは,リンパ腺の機能が微細物質阻止にあることを確實とし,惡性腫瘍や膿球に對してもその防障をなすと考えた。實際に,細網組織を具えるリンパ洞はその理論に適合するような構造を示すのである。この説が廣く信ぜられるに從つて,リンパ腺とは構造の異なるリンパ樣組織にもそれが適用せられた。たとへば扁桃腺,腸濾胞がそれで,こゝにはリンパの流入はないのである。したがつてリンパ球自體の機能についても長らく不明であったが,近年に至つてそれに關する研究が數多く現われた。1935年にMeMaster等は細菌がリンパ腺洞に止まると抗體形成を促すと報告した。1943年Dougherty等は副腎皮質ホルモンがリンパ樣組織に影響を及ぼし,かつ血中のガンマ・グロブリンを増加する作用のあることを唱えた。そして感染症の場合,このガンマ・グロブリンが抗體の重要な源泉となるとした。リンパ球の抗體産生は一種の分泌によるとも,またそれの分解によるとも考え.られた。他の報告によると,抗原を輿えられた動物のリンパ腺には抗體が増加し,もし抗原とともに副腎皮質エキスを與えると抗體は一層著しく増加した。しかし白鼠のリンパ樣組織を90%剔除してもガンマ・グロブリンに變化の起らないという實驗もあつた。
Copyright © 1950, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.