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海外トピックス
pp.338-339
発行日 1950年8月1日
Published Date 1950/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200386
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メラニン形成の諸問題
Bloehがdopa(dioxyphenylalanin)からメラニンを形成する酵素としてドーパ酸化酵素(ディフェノラーゼ)を鐙してから,哺乳類の皮膚内にはフェノラーゼの存在することが知られた。その際の化學攣化はRaper等のチロジナーゼ(モノフェノラーゼ)の研究によつて推定せられるに至つた。すなおち主に植物に存するこの酵素はチロジンを赤色の色素に變じ,次いでこれは酸素の存在において酵素の作用を受けることなく黒色のメラニン様物質となる。ドーパはかゝる過程における第1の中間産物と考えられる。この研究によつてメラニン合成の起點はチロジンでありうるわけであるが,正常皮膚にチロジナーゼを發見しようとした幾人かの試みは失敗した。しかるに1942年にHogeboom等は二十日鼠の黒色腫の抽出液中にこの酵素の存在を確證し,これによつてチロジンもドーパも速かに酸化せられるのを見た。しかし皮膚メラニンの母體についてはなお明らかでない。Roth-manは,皮膚においてドーパの存在を證することはできないが,試驗管内ではチロジンを鐡鹽の存在において紫外線照射によつてドーパに變えうることを示した。これかなみると,皮膚内にチロジナーゼの存在は證明せられたものゝ,やはりドーパが母體となるとも考えられる。
副腎機能とメラニン形成ととの關係についてはなお決定的な結論を得ていない。
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