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抗生物質として目星しいものは7,8種が擧げられている。而て夫等の多くは性病の治療劑として優秀であることが判つて來た。殊にAureomycinやChloromycetin將又Terramyein(10)は治療が簡單な經口療法である。本劑等をもつての淋疾治療は一,兩日とか或は1回投與で良い樣に記載されていて,投與手技はSulf.劑以上に簡便である。前2者が最近人手出來る樣に成つたので,余は表題の經驗を豫め濟ましておくことにした。
扨淋症のPen經口療法は既に早くから市川教授(11)(12)之を取上げ,東大教室からは興味ある業蹟が多數發表されている(32)。大森等(21)之を追試し,安部(1)之を追試する他,尚自ら考按する處あつたが,當時の此等の報告に據れば,淋疾の經口療法は日常の臨牀には未だしの印象であつた。其後,緩衝Pen錠が規格付けられたPenの經口劑として發賣が許可され,既に相當の月日が經過している。試供品時代市川教授等(13)田村教授等(29)淋疾の患者に之を試みたが,淋疾への治療効果として多數例を集めた報告は今日迄發表されていない。余は之を奇異としているのである。即經口療法の沿華,發達史は市川教授,田村教授(28)佐々教授(26)或は中澤氏(19)等の綜説に讓るとして,その變遷を顧ると,發祥は實に古く,1941年に遡上ることが出來る(2)。1944,1945年頃は最も活溌に論議されて,結局,Penの内服は吸收が惡い,本手技を以つての成功は非經口療法に比べて大量を要す,製産高微々たる當時に於ては實際的でないとされて,以後此方面の研究は頭打ちと成つたのである。かくてPen療法は非經口的療法であり,Pen療法は非經口的手技に據つて完壁の境に迄到達することが出來たが,經口療法はその蔭に默々として小兒科或は我々の性病學の分野に於て進められていた。他疾患は非經口療法に據らねばならないが,淋疾や肺炎の治療には有望であることが想像されたり(7)經口療法が効果的であるや否やの試金石として淋疾が對象とされていただけ(9)(24),Penの經口療法は我々の專問分野に於て獨壇場が似然として存在するのである。一方Pen療法は人類の福祉に絶大の貢献をなしたが,それは専ら注射療法に據る醫家の専問的技術を通してのみであつて,社會人自の手近の幸幅に對しては隔靴掻痒の現況である。社會人は多忙である,往時のsulf劑の如く,Pen錠の内服で簡單容易に淋疾が治癒せしめ得られれば安價,簡便を絶對に希望する社會人には幸福格段である。機會あれば我々はどうしても突詰めねばならない命題と余は考えていた。上記の如く,余にとつてその時機が到來した。現在の國産Pen錠が淋疾治療に期待し得る程有効なりや,非經口療法に比べて如何,同時に社會人にとつて實用的な最も簡便,安易な使用法で優秀な成功率を收めるには如何なる服用法に據る可きかを余は考究する事にした。
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