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淋疾のペニシリン短縮療法に就て
山本 欽三郎
1
,
荒井 潔
1
,
手塚 敏夫
1
1東京鐵道病院皮膚泌尿器科
pp.342-346
発行日 1949年8月1日
Published Date 1949/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200230
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緒論
我々は淋疾の治療劑として既にSulfamin劑(以下サ劑とする)を獲すこが,今日はそのサ劑も抵抗症例多くして昔日の聲價を失つてしまつた.之れに代る可きPenicillin (以下ぺとする)なるものをA.Fleming等によつて提供されてサ劑に勝る武器とすることが出來た.Domagkは淋疾の治療藥としてサ劑を創造したのではあるまい.Fleming等も亦治淋劑を目的としてぺを考究したのではないであろうが,サ劑,ぺ製劑は淋疾治療界に於て非常なる偉効を奏し,且つ又他疾患では及ぶ事の出來ない確然たる効果を現わしている.余等はサ劑でもぺ製劑でも先づ淋疾の治療に試みてその効果が價値づけられるであろうとすら考えている.かゝる偉効を示すぺ療法も残念な事には製劑の排泄迅速なる爲,血中有効濃度の保持の目的に頻回住射をせねばならない.又それの延長の爲には長時間加療せねばならないのである,此處に於て油蝋ぺ,プロカインペが創製されたのでる.油蝋ぺ,プロカインペでの淋疾治療は只一回の注射で良い.我々は之を合成して呉れた化學者に感謝するものである.我々は化學者の研究によつて斯く恩惠を蒙ると雖も,臨床家は臨床家の立場に於て創意・工夫がなくてはならないと思う.即ちぺを用いて淋疾を加療するに,その治効は非常に目覺しい事を覺える.余等は20萬單位を以て最初3時間間隔5回の分割注射を行つていたが,之を2時間間隔にしてもその治療率には相違がない.
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