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輓近に於ける癩菌培養批判
佐藤 三郎
1
1東北大學抗酸菌病研究所
pp.349-353
発行日 1950年9月1日
Published Date 1950/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200389
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I
癩菌の培養は現代醫學に遺された重要課題の一で,内外多くの學者によつて今尚研究が續けられている。從來の研究の大要はKlingmüller,MeKinley等の優れた綜説に詳しく,特に本邦に於ける研究に就ては寺田教授の簡單な抄録を付した解説があつた。その他戸田教授等や私も亦その時代に於ける新しい研究を紹介しておいた。
人も知る如く癩材料から癩菌類似の抗酸菌を分離した報告は極めて多く中には癩菌に擬せられたものも少くない。斯く言う筆者も嘗て太田教授と共に多くの癩患者の血液及癩結節から多數の抗酸菌を分離し,之を癩菌と誤診したことがあつた。今日では結節,血液その他の癩材料中に非病原性抗酸菌が迷人することがあるのは普く知られる事實で,それ等は所謂恥垢菌とも關聯があり,Eiehbaumの自然界抗酸菌の研究綜説中に詳細に檢討し盡されている(1927)。これより先Rogers and Muhr(1927)ほ癩材料から分離れた多数の抗酸菌菌株を1),diphtheroid乃至streptothrixに屬する菌,2),着色性集落(chromogenic)を作るもの,3),無色(白色)の集落(Non-pigmented)を作るもの,4),嫌氣性抗酸菌の4種に分けたが,從來多くの人々の獲た癩菌と稱される菌は此の中の何れかに層し,殊に(1)や(2)であることが多く非病原性抗酸菌に他ならないことが明にされている。
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