綜説
網膜剥離に対する鞏膜短縮術の輓近の趨勢
岸本 正雄
1
1京都大学眼科
pp.356-361
発行日 1954年3月15日
Published Date 1954/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201801
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Goninが1919年綱膜剥離の発生病理に於ける網膜裂孔の意義竝に手術的に裂孔を閉塞することが本症治療の要諦であることを発表し,続いて1929年,1931年多数の手術例を得て治癒率53%と云う良成績を発表してより,網膜剥離治療に対する裂孔閉塞術は俄然斯界の注目の的となつた。その後Weve(1932),Safar(1932)が裂孔閉塞をヂアテルミーを応用する電気凝固法にて行うことを案出してから,手術は容易確実となり,本手術法が急速に全世界に普及し,我国に於ても我々の恩師盛教授は夙に本手術法を採用し,累次に亘つてその経験が同教授並に門下によつて発表せられているが,同教授の著書「網膜剥敵の手術療法」(昭25)に於て多年の豊富な経験の粋が結晶し,我国に於ける網膜剥離治療の決定版が出来た。茲に於て往昔は殆んど不治と見なされていた網膜剥離もその多数が失明の昔より救われるようになつた。
網膜剥離の治療はその手技の細部に於て,仮令若干の改変が將来行われることがあるとしても,裂孔を閉塞し兼ねて網膜下液を排除せしめるにあると云う鉄則は,永却に修正さられる時が来るとは思われない。
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