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嚢胞腎の治療法に就て
井上 彦八郎
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1東京大學附屬醫院分院泌尿器科
pp.69-72
発行日 1949年2月1日
Published Date 1949/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200157
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嚢胞腎に於て,腎組織の到る所に發生する大小無數の嚢胞の爲に腎は異常に増大し,且腎實質の壓迫萎縮を起す結果腎機能の障碍を來す.之等に對して根本的治療法と云ふものはなく我々の惱む所である.現在の所療法は穿刺,烙刺術(Iguipun-ksur nach Payr),又は1935年Goldsteinの發表した方法位で滿足しなければならない状態にある.單なる穿刺では嚢胞の再發を來す恐れが多く,烙刺術では腎表面の再發は防げるが,深部の嚢胞には利用出來ない.又Goldsteinの方法では嚢胞が再發した場合,腎を再び露出しないで穿刺出來る利點はあるが血管を損傷せしめる危險がある.
本症の登生原因に就いては種々説があるが,何れにしても腎表面及び内部に存在する嚢胞内皮細胞が存する限り,内容の再瀦溜は當然起ると考へるべきで,嚢胞内容を出來る丈け穿刺してその後にこの内皮細胞に變性を起させ,嚢胞を硬化せしめたら再發を防げるのではないかと考へた.
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