連載 Dr.長坂の身体所見でアプローチする呼吸器診療・15
—Common Diseaseの身体所見④—肺癌と肺の腫瘍性病変
長坂 行雄
1,2
1洛和会音羽病院
2洛和会京都呼吸器センター
pp.158-163
発行日 2019年2月1日
Published Date 2019/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1437200228
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京都府の統計では,肺癌患者の発見は症状が出て受診するのが約半数,他疾患の治療中に偶然発見されたり,検診で疑われたりする例がそれぞれ1/4ずつで,割合は胃癌,大腸癌とほぼ同じである1).英国の研究2)では,肺癌患者の最も多い初発症状は咳嗽,息切れでそれぞれ40%と26%にみられたが,同じように肺癌が疑われたが診断の結果癌ではなかった症例では咳嗽が50%,息切れが26%にみられた.血痰や喀血,胸痛,食思不振も同様に肺癌が疑われた症例では最終診断が肺癌であっても違っても5〜15%程度にみられ,差はなかった.肺癌の経過中にはいずれの症状も2倍程度に増える.自覚症状で肺癌を疑うことはできても鑑別には無力である.しかし,咳だけで発見された肺癌は比較的予後がよかった,という報告3)もある.疑いがあれば適切に検査を進める必要がある.
実際に肺癌が疑われる患者の診察では,喫煙歴を聴き,ばち指の有無を観察して頸部から鎖骨上窩リンパ節を触ってから聴診する.喫煙歴があり,胸鎖乳突筋が発達していればCOPDが疑われるので,喫煙者としても肺癌の確率はさらに高い4).ばち指が肺癌患者で診られることは少ないので,ばち指が高率にみられ,肺癌の合併も多い間質性肺炎の存在を疑う.鎖骨上窩リンパ節は,両側の胸鎖乳突筋の胸骨付着部の辺りに親指の指頭を押し込む感じで触診する.指頭に圧痛のある塊を触れれば鎖骨上窩リンパ節が腫大していると考えられるので縦隔の読影に気をつける.
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