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呼吸管理は自発呼吸の吸入酸素濃度を上げるだけの酸素療法から,生体肺の影響を受けず100%人工的に呼吸を行う膜型人工肺(ECMO)まで,極めて幅広い手段を用いて実施されるようになった.そのなかで直接患者に侵襲を加えない非侵襲的と考えられるのは通常の酸素療法,高流量鼻カニュラ(HFNC)酸素療法,非侵襲的換気療法(NIV)である.これらの非侵襲的方法は簡便であることより,救急外来,ICU,一般病棟など各種医療機関の様々な部署で広く用いられ,呼吸不全に関わるすべての医師やコメディカルにとって必要かつ習熟しておくべき基本的診療手技と考えられる.しかしながらそれらの使い分け,特にHFNCとNIVの使い分けにおいてはまだまだエビデンスが不足しており,疾患や病態ごとに明確な線引きがなされていない現状である.またNIVにおいて使用頻度や習熟度には各施設で大きな開きのあることが指摘されており,新たに臨床現場に導入されたHFNCも簡便であるという理由だけで十分な指導や理解のないまま使用されている可能性がある.そのなかで実際に使用するに当たっては,呼吸不全エキスパートの手法や経験から学ぶのが最善と考えられ,呼吸器専門医を目指して研修中の若手医師においては,どの施設でどの程度積極的に関わって経験を積んだかによって,その後の呼吸不全診療レベルが大きく左右されると言っても過言でない.
本特集では非侵襲的呼吸管理の経験が豊富で指導に長けた著者により,実際の症例提示をもとにその病態に対するアプローチ,すなわち呼吸管理法の選択,設定,管理などの重要ポイントを解説いただき,経験症例数に限りのある医師でも身近にそのノウハウに触れ,手技の習熟が高められることを目的とした.またあえて現在議論の分かれるHFNCとNIVの使い分けの部分についても,症例に基づいた突っ込んだ議論をしていただき,現場での応用への道筋をつけていただいた.いずれのパートも名人たちの渾身の力作である.読者の明日からの呼吸管理に大いに役立つこと間違いなしと自負している.
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