扉
華岡青洲と脳外科手術
板倉 徹
1
1和歌山県立医科大学脳神経外科
pp.302-303
発行日 2000年4月10日
Published Date 2000/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436901868
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私の大学から車で1時間の距離に華岡青洲の生家がある.ミカン畑の中でほとんど人通りのない寂しい場所である.青洲存命中は全国から青年医師が教えを請いにこの地に来た.もちろん近隣から多くの患者が押し寄せ,「門前市をなすがごとし」と伝えられている.
この華岡青洲が世界に先駆けて全身麻酔下に乳癌の摘出手術を行ったことはよく知られている.乳癌以外にも各種の癌から外傷,眼科疾患,口蓋裂,生殖器,運動器疾患と,その疾患が多岐におよぶことにはまったく驚かされる.その症例の記載は実に詳細で,「摂州大阪,長堀玉造橋,紀ノ国屋弥助は二十五,六歳頃から淋疾を患い,数年後に石淋となる.」といったぐあいに尿路結石の症例が記載されている.もちろん,手術方法は独創的で,その記載は豊富な図を示して完璧である.
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