文学にみる病いと老い
(88)「華岡青洲の妻」
長井 苑子
,
泉 孝英
pp.138-144
発行日 2015年8月20日
Published Date 2015/8/20
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.33.08_0138-0144
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世界最初の全身麻酔*2による乳癌手術に成功し,漢方から蘭医学への過渡期に新時代を開いた紀州の外科医華岡青洲。その不朽の業績の陰には,麻酔薬「通仙散」を完成させるために進んで自らを人体実験に捧げた妻と母とがあった……。(文庫本カバー裏表紙より引用)本書を紹介する経緯について少し触れておきたい。この本は名作で,すでに古典的な価値を与えられている。いまさらの感もないわけではない。しかし,個人的には,ある本にきちんと出会い,読み終えるということには,きっかけというべきものが必要となることがある。この本は,このシリーズで紹介できればとは考えていたのだけれど,最近,さらなる刺激となることがらが3つあった。1つは,このシリーズに注釈をつけて内容に厚みを与えていただいている泉先生が,日本医史学会矢数医史学賞を受賞[平成26年,日本近現代医学人名事典(医学書院)]され,大宰府*3の国立九州博物館*4での授賞式に参加して以来,医学の歴史に関心をもつことも大切だと実感したことである。
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