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編集後記
𠮷田 一成
pp.592
発行日 2019年5月10日
Published Date 2019/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436203989
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『脳神経外科』2019年5月号は,令和元年の第1号となる.令和の出典は万葉集であるそうだが,ある日本古代史の教授は,平和な時代になってほしいという思いが読み取れるという.一方,ある日本文学の研究家は,典拠の文脈から,「権力者の横暴を許せないし,忘れることもできない」というメッセージが隠されているという.行間の読み方は,専門家でも分かれるということか.新しい時代の門出を,国民皆で祝福したいと思うのは私だけであろうか.
平成の時代,脳神経外科は多様化が進んだ.血管内治療や神経内視鏡手術が普及し,一部の同じ疾患に対する治療法が多様化した.最近ではexoscopeが登場し,従来のmicrosurgeryに取って代わる可能性をも秘めている.本号でもさまざまな疾患が取り上げられている.寺岡先生が「扉」で触れておられるように,地域医療・介護の在り方も超高齢化時代に対応するように変わりつつある.日本の脳神経外科医は,手術や血管内治療など外科的治療にのみ専念することはできず,幅広く脳神経疾患の患者の診療を行っている.平成の時代に,日本専門医機構による専門医制度の改革があった.脳神経外科の専門医制度は,それほど大きな影響は受けなかったが,この時代に脳神経血管内治療や神経内視鏡手術などのsubspecialtyの専門医制度が確立されていき,今後もさまざまなsubspecialtyの専門医制度,技術認定制度が増えるものと思われる.脳神経外科自体が専門性の高い診療科であるが,その中でもより高度な専門性を必要とする時代になった.
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