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編集後記
𠮷田 一成
pp.488
発行日 2015年5月10日
Published Date 2015/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436203058
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2015年年明け早々,「イスラム国」により日本人人質2人が惨殺されるという衝撃的なニュースが飛び込んできた.3月には,チュニジアで,観光客を標的にした無差別テロが発生し,日本人3人の命が失われた.現内閣は,憲法解釈を変更し,集団的自衛権の行使を拡大しようとしている.戦争を知らない世代がすでに定年を迎えた日本が,今なお,近隣諸国から,戦争責任を問われている.日本は戦後の平和的な高度経済成長の中,何か,見失っていたものがあるのかもしれない.ITの進歩により,大量の情報が瞬時に世界中を駆け巡る時代,また,技術革新により,さまざまなmodalityが身近になった今,大量の情報をいかに解釈し,進むべき方向を正確に判断するかが,極めて大切になったように思う.
本号では,「扉」で,OSCE,CBTなど,新しい医学教育が解説されている.また,脳神経外科医に必要な基礎知識から,最新の内視鏡下頭蓋底手術の紹介,多数の興味ある症例報告は,脳神経外科医の明日の診療に役立つものである.中でも,患者の被ばく線量に関する研究は,医師が常に心にとめておかなければならない重要な問題を提起してくれている.近年,Big Dataという言葉が,表舞台に出ることが多くなり,その解析によって,見えてくる病態,治療成績というものも極めて重要である.一方,本号に掲載されているような,詳細な記載,個々の症例を綿密に解析する研究は,医学のもう1つの柱である.個別化医療という言葉があるが,一人ひとりの患者にとって,最善の医療を提供するという意味でも,極めて価値が高いと思う.
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