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外堀通りの歩道を歩いてみた.桜が満開である.完璧な自然の美である.ほんのりと桜色のソメイヨシノの中に,純白の桜があることに初めて気付いた.調べてみるとオオシマザクラといい,この桜と日本原産種の桜との交配で,江戸末期にソメイヨシノが生まれたそうである.
今月号の「扉」では,三木保教授が,医療安全について詳しく解説している.侵襲的治療処置にリスクはつきものであるが,それが合併症なのか,医療過誤なのか,線引きは難しい.いずれにしても,患者,ご家族にとって不幸である.医療従事者は,安全を第一に心がけるべきである.安全な医療を行うために個人の努力は大切であるが,それだけでは不十分で,組織としての体制やルール作りが必須である.われわれは,診断や治療行為を安全に行わなければならないが,予防という点でも責任を負わなければならない.永廣信治教授の総説では,スポーツ外傷の問題が扱われている.頭部外傷の既往のある選手を競技に復帰させてよいのか,医師の責任で判断しなければならない時代である.義務教育で必修化された柔道では,受け身の技術が未熟な場合に頭部の事故が多発するという.コンタクトスポーツで,どこまで頭部外傷の予防が可能なのか,医師に何が可能なのか,考えさせられる.本号では,迷走神経刺激療法(VNS)に関する臨床研究をはじめ,興味ある症例や,学ぶべき症例が多数掲載されている.VNSは,治療効果,合併症の可能性,医療コストなどを考えると,医師にとってストレスのある治療のように思われるが,この治療によって救われる患者がいることが,支えとなっているのであろう.高度な医療に限らず,リスクはつきものであるが,医療技術・医学の進歩と安全,そのバランスをとることが必要である.
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