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桜の花のほころび始めたころ,本号の原稿が届いた.「扉」を読んで,世代の離れた2人の偉大な脳神経外科医の火花が飛び散りそうなぶつかり合いと,その背景にある信頼関係を感じ,熱い思いを覚えた.北海道の桜は,葉が出てから花が咲くそうである.所変われば品変わるというが,脳神経外科領域でもそうであろう.標準治療,ガイドラインに沿った治療が尊重される時代だが,患者が求めるのは,平均的な治療ではなく,エキスパートの治療である.標準治療までは与えられたレールをそれなければ到達できるのであろうが,エキスパートとなるには,道なき道を歩まなければならず,多くの脳神経外科医は道半ばにして現役を終えている.エキスパートと認められている脳神経外科医も,本人は“完成している”とは思っていないのかもしれない.
総説では,急性期脳梗塞に対する血管内治療についてご執筆いただいた.血管内治療の進歩は目覚ましく,明らかに脳神経外科治療を取り巻く情景は変化している.次々と開発される新しいdeviceの登場により,新たな観血的治療の道が開けてくる.革命的な治療は,必ずしも開発当初から優れた治療成績を収めるとは限らず,見直し,改良を積み重ね,従来の治療成績を上回るように進化することも多々あるのではないかと思われる.また,血管内治療と外科手術は,決して対立するものではなく,共存すべき治療手段である.両刀使いが常識である日本は,正しい方向へ進んでいると思われる.また,本号にも多くの症例報告が掲載されているが,いくら年齢を重ねても,患者から学ぶことは尽きない.脳神経外科領域の疾患も,まだまだ解決の見通しすら立たないものも多々ある.連載「脳腫瘍Update」で取り上げられている髄膜腫は,最も頻度の高い脳腫瘍であり,良性腫瘍が多く,全摘出ができれば根治可能であるが,浸潤性で全摘出不能な例,悪性度の高い組織型もあり,それらに対する補助療法の有効性は確立されていない.外科医としての技術を習得することと,不治の病をいつの日にか克服してやろうという気概もって,日々,研鑽を積まなければと思う.
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