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Ⅰ.はじめに
脳深部刺激療法(deep brain stimulation:DBS)は,その最初期には精神疾患および疼痛の治療として臨床応用された2,9).その後,さまざまな抗精神病薬や鎮痛薬の出現によりDBSが大きく普及するまでには至らなかったが,それでも薬物抵抗性の疼痛の治療オプションの1つとして,50年以上にわたり臨床で用いられている.1980年代後半に運動障害に対して臨床応用されて以降,その優れた臨床効果から対象疾患が大幅に拡大し,今日では進行期のパーキンソン病(Parkinson disease:PD)がDBSの主要な対象疾患となっている.
DBSの発展は,臨床神経学の進歩や神経生理学的な研究成果の蓄積に拠る所が大きく,DBSは局所の神経活動を調節するとともに,刺激局所から遠隔の部位にも影響をもたらすことが明らかとなっている.そのため,神経回路などのネットワークの機能異常を原因とする疾患も潜在的なDBSの対象とみなされており,今日ではPDや振戦を中心とする不随意運動,薬剤抵抗性の疼痛性疾患に加えて,てんかん,強迫性障害やうつ病などの精神疾患5)にもその対象を広げつつある.
このような臨床的発展のスピードに比べて,デバイス改良のスピードは決して速いとはいえず,長らく改良・発展型の新規デバイスの発売が待望されていた.近年,ようやく複数の機器メーカーから新機能を搭載したデバイスが上市された.それらのデバイスの機能は,理想とする刺激を具現化するためにはまだ不十分なところも多い.しかしながら,従前のデバイスと比較すると格段に機能が拡充されており,すでに臨床効果の改善を多くのユーザーが実感している.
本稿では,新規デバイスの特性を従前と比較して紹介するとともに,そのデバイスの特性を生かしたPDに対するDBSの現状を解説する.
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