扉
織田信長と人間五十年
園田 順彦
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1山形大学医学部脳神経外科
pp.381-382
発行日 2017年5月10日
Published Date 2017/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436203517
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小学生のころ,私は歴史小説が好きで,特に織田信長が一番のお気に入りであった.ちなみに晩年衰えた豊臣秀吉,地味な徳川家康は私の好みではなかった.地域差はあるようだが,信長は戦後の日本人の中では圧倒的な人気を誇る武将であり,私も例外ではないということである.さて,当時読んでいた小説の最後のあたりに,信長が敦盛の一節「人間五十年……」に1歳足りない49歳(数えであるから実年齢は48歳)で亡くなったという記載があった.実際の「人間五十年,化天のうちを比ぶれば,夢幻の如くなり」の意味は,人間界の50年は下天においては1日に過ぎないということで,50歳を意味しないのであるが,なぜかこの一文だけが強烈な記憶として私の中に残っている.おそらく多くの改革をなしとげ,天下統一寸前までいった信長は,まだそんなに若かったのだ!という驚きでもあり,己が49歳の時,何をしているであろうかといった思いがあったのだろう.
先日のことであるが,手術が終わり学生と談笑していた時,ふと今日は自分の49歳の誕生日であることに気が付いた.「信長が死んだ年齢に,ついに自分も……」という思いが約40年ぶりによみがえったのである.思わず口に出してしまったら,「先生はそのようなことを意識していたのですか!」と学生も驚いていたが,突然言われたら無理もないことである.
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