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Ⅰ.はじめに
超高齢社会を迎え,骨粗鬆症の有病率は上昇しており,現在では国民の約1割がこの疾病を有するとされる.骨粗鬆症は,高度な外傷がなくとも生じる脆弱性骨折の原因となり,これら骨折の中で胸腰椎に生じる椎体骨折(一般的には圧迫骨折と称される)は最も頻度が高い.本邦では70代前半の25%,80歳以上の43%が椎体骨折を有するとされる31).高齢者の急性腰背部痛には骨粗鬆症に伴う胸腰椎椎体骨折が含まれている場合も多く,救急外来の対応においても見逃しが危惧される疾患である10).診断の遅れや不適切な治療介入は,良好な骨折治癒に至らず偽関節化や椎体圧潰進行の可能性があり,疼痛の遷延や高度な脊柱変形,神経症状発現のリスクを生じる.不良な経過を辿れば,身体運動機能ばかりではなく心理的苦痛や内臓機能障害などを伴い,日常生活や社会活動性,生命予後にも影響を与える.早期に適切な診断加療を行えば,より早く,より負担が少なく,よりよい状態で従来の生活に復帰できるため,「圧迫骨折はなにもせずに寝ていればそのうち治る」という医療側の姿勢は許容されるものではない.また,再発予防の観点からも当該骨折の治療のみに焦点を当てず,将来的な骨粗鬆症治療,再骨折予防の対策を行わなければならない.
脊髄脊椎疾患治療に携わる脳神経外科医だけではなく,救急診療や高齢者一般外来に対応する脳神経外科医にとっても,この疾患の診断と治療を知っておくことは,診断ミスや治療のトラブルを回避するための必須事項である.また,保存的治療における薬物療法の進歩も目覚ましく,外科治療についても低侵襲化,革新的な手技の開発など選択肢が多様化しており,おのおのの治療法について利点と欠点を含め最新情報を整理しておくことが必要である.本稿では,骨粗鬆症に伴う胸腰椎椎体骨折の診断と,各種治療法について概説する.骨粗鬆症に関する診断基準については「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」に記載されており参照いただきたい.
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