Japanese
English
総説
脳卒中患者に対する細胞治療開発
Cell-Based Therapy for Stroke Patients
田口 明彦
1
Akihiko TAGUCHI
1
1先端医療振興財団先端医療センター再生医療研究部
1Department of Regenerative Medicine Research, Institute of Biomedical Research and Innovation
キーワード:
stroke
,
cell therapy
,
neurogenesis
,
angiogenesis
,
regenerative medicine
Keyword:
stroke
,
cell therapy
,
neurogenesis
,
angiogenesis
,
regenerative medicine
pp.1071-1079
発行日 2015年12月10日
Published Date 2015/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436203183
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Ⅰ.はじめに
脳卒中予防に関しては,降圧薬や抗血小板薬/抗凝固薬などの多くの有効な薬剤が存在し,また脳梗塞超急性期における神経細胞死の防止に関しても,血栓溶解/血栓除去療法など有効な治療法の開発が進んでいる.しかし,これらの治療法のtherapeutic time windowは脳卒中発症前あるいは脳梗塞発症数時間以内であり,脳組織壊死が生じた後に脳神経機能回復を促進する,さらにtherapeutic time windowを延長する治療法の開発が切望されている7)(Fig.1).
偉大な脳神経解剖学者であったサンティアゴ・ラモン・イ・カハール博士(1906年ノーベル生理学・医学賞受賞)は“脳は再生しない”と断定し,脳の再生を完全に否定する彼の宣告はドグマとして後世に強い呪縛をかけ,神経機能再生に関する研究を長期間抑圧してきた.しかしマウスなどの齧歯類だけではなく,ヒト成人脳においても神経細胞の新生が日常的に起きていることが1998年に証明され3),以後神経再生およびそれに基づく再生治療の研究が急速に進んでいる.本稿では,われわれが進めている脳卒中患者に対する内因性神経再生促進を目的とする自己造血幹細胞移植の臨床試験について紹介するとともに,急性期における過剰な炎症反応の制御を目的とした間葉系細胞移植や慢性期における神経幹細胞移植の臨床試験など,脳卒中患者に対する細胞治療の国内外での臨床知見について概説する.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.