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Ⅰ.はじめに
細胞移植は再生医療において中心的役割を果たす治療手段の1つで,脳神経外科領域でも神経変性疾患,さらに脳梗塞や脊髄損傷などの有力な機能的脳神経外科治療として将来を期待されている.特にパーキンソン病に対する移植治療は既に1990年代初めより欧米諸国やわが国において臨床応用され,長期の臨床効果も明らかとなりつつある.
本連載で既に取り上げられているパーキンソン病の一般的な外科的治療である視床破壊術や深部脳刺激術は,神経核の異常電気活動を消失もしくは変調させることによって運動機能障害の改善を期待する定位脳手術である.それに対して,同疾患に対する細胞移植療法はカテコラミン産生細胞の脳内移植により変性脱落したドーパミン(DA)細胞の機能代償をはかろうとする治療戦略である.現在,パーキンソン病患者に対する細胞移植療法のドナーとして,主としてヒト胎児中脳由来のDA細胞が用いられており,その成績が欧米諸国の施設から報告されている.胎児ニューロンはその旺盛な再生能により,ホスト脳内で分化して破綻神経回路網を再建できるということから細胞移植治療の最適のドナーといえる.しかし,人工中絶された胎児の組織を移植治療のドナーとして用いることは,宗教上あるいは倫理上の問題から,わが国では非常に難しい.そこで,わが国ではヒト胎児組織の代わりにやはりカテコラミン含有細胞からなる自家交感神経節を用いた移植治療の開発が行われ,1991年から頸部神経節(星状神経節)移植の臨床応用がパーキンソン病に対して行われてきた1).本稿ではこの自家交感神経節を用いた移植治療について,最近われわれが導入している胸部交感神経節移植7)を中心にその適応と手技,さらに移植によって得られる臨床効果について概説する.
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