扉
マイクロコンピューター時代に向けて
谷 栄一
1
1兵庫医科大学,脳神経外科
pp.127
発行日 1985年2月10日
Published Date 1985/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436201961
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CT scannerを頂点としたマイクロコンピューター時代が医学界に到来している.コンピューターが導入される時,よくいわれるのは,将来コンピューターが人間の頭脳を支配するのではないかということである.幸いにその道の多数の識者の意見によれば,そのような事態は起り得ないとのことである.
さて,CTを有力な診断技術として使用している脳神経外科ではどうであろうか.確かにCTの出現により,脳疾患が早期に正確に診断できるようになり,従来患者の神経症状より,神経内科医が入らない脳神経外科医だけで,時々まとまりなく続いた議論もある程度解消され,microsurgeryの技術進歩と相まって手術成績も飛躍的に向上している.CTで脳疾患が正確に診断できればできるほど,CT万能の気風が蔓延して,神経学的所見の把握とか他の診断法の解釈の点が疎かになりがちである.あたかもテレビの普及によりテレビ人間が生れているのと同様に,脳神経外科でもtech-nician doctorが生れているのではなかろうか.CT上の所見を的確に捕えることは勿論必要であるが,脳神経外科医は患者を直接治療する立場にある.また,症状の変動がはげしい患者ではいちいちCTをとることも事実上できないし,患者の神経症状を基盤にして,CTその他の所見を読影することが要求される.かつて,1枚の組織標本から,その裏に展開されている病的過程を教えられたことがある.
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