扉
脳神経外科診療の普遍化のめざすもの
坪川 孝志
1
1日本大学脳神経外科
pp.887
発行日 1984年7月10日
Published Date 1984/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436201878
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ある識者は,日本の脳神経外科が関与する学会での熱狂的なほどの演題数や年間10万件に近い津々浦々での脳手術数,1,500名以上の脳神経外科認定医数などを挙げて,その隆盛と普遍化は,脳神経外科学の日本での発展を必ずしも意味しないと批判している.単に高度経済成長に支えられた日本特有の医療報酬制度によって診療が普遍化したに過ぎないといい,その日本の高度経済成長が,欧米で経済性を無視してはぐくんできた基礎的学問を日本人の器用さと勤勉さで巧みに盗用した結果であるように,脳神経外科治療も発展したにすぎないとつけ加えている.
確かに学問の歴史のない後進国日本では,科学する必然性もなく,また方法すら模倣から出発しなければならなかったし,日本の風土が学問の育ちにくい環境であったことも事実である.しかし,科学しなければならない必然性があれば,その結果の集大成として,どのような環境でも学問が育つはずである.その科学しなければならない必然性が,いかに激しいか,どれほど広い層で感じとられているかが,学問の発展を条件づけている.
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