ぱんせ
普遍の自覚
宮坂 道夫
1
1新潟大学医学部保健学科
pp.238-239
発行日 2006年3月1日
Published Date 2006/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100054
- 販売していません
- 文献概要
- 参考文献
3人の医師
私は一応,医療倫理という学問を専門にして,ハンセン病問題にも触れた教科書1)を出版した.だが私は,ハンセン病問題に関してはまったくの無知な人間だったし,今もそうだと自覚している.
折しも,この原稿を書いていた2005年11月26日,信州大学医学部保健学科で開かれたハンセン病問題についてのシンポジウムに招かれた.私は大学の教員としてではなく,この問題を知らずにいた人間の代表のつもりで,シンポジストをお引き受けした.ハンセン病問題は,いうまでもなく,日本の近代医療政策が犯した最大の過失の一つである.その被害者の苦しみは,被害者当人にしかわからない.大きな苦しみを負った人を前にして,無知だった人間がとりうる道は二つある.一つは彼らをずっと遠ざけたままにしておくことであり,もう一つは,少しずつでも彼らのほうへ歩みを続け,近づき続けることではないか――私はそんなお話をさせていただいた.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.