扉
美しさ温かさそして懐かしさ
井奥 匡彦
1
1近畿大学脳神経外科
pp.1005-1006
発行日 1980年11月10日
Published Date 1980/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436201227
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美しさ,温かさ,そして懐かしさ.これらは情緒のうちでも知的で高等な感情であり,人間の情操の重要な部分を成すものである.美しい風景や絵画に心を動かされるとき,文芸作品や音楽に心を打たれるとき,その人には受動的にこれらの感情が生じてくるのである.また,人と人との触れ合いにおいても,かかる感情の起こることはよく経験せられる.人間は万物の霊長であるがゆえにいえることであるが,たとえば薄幸の人が,ふとある人との接触において,気付かぬままに無形の影響を受け,力づけられ,希望をもち,ある場合にはその人に憧憬を寄せるようになるのを見かけることがある.やはりそこには,美しさ,温かさ,懐かしさ(心を引かれる思い)を覚えるが,それは影響を与えた人の意識的(能動的)な行為によるものではなく,その人のもつ情操の豊かさによるものであるということができる.
次に掲げるのは,かつて私の目に留った一編の随筆である.
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