Japanese
English
総説
悪性脳腫瘍の化学療法—そのpharmacokinetics
Chemotherapy of Malignant Brain Tumors:Biology and Pharmacokinetics
星野 孝夫
1
Takao HOSHINO
1
1カリフォルニア大学脳神経外科
1Department of Neurosurgery, University of California
キーワード:
Brain tumor
,
Chemotherapy
,
Biology of gliomas
,
Pharmacokinetics
,
Nitrosoureas
Keyword:
Brain tumor
,
Chemotherapy
,
Biology of gliomas
,
Pharmacokinetics
,
Nitrosoureas
pp.1007-1016
発行日 1980年11月10日
Published Date 1980/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436201228
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I.はじめに
悪性脳腫瘍は見方によっては非常に化学療法を行うのに適した腫瘍といえる.脳腫瘍が脳というほとんど分裂機能を停止した組織に発生し,しかも転移も極めて稀であること等から,治療を腫瘍本体およびその周辺組織に集中して行えるからである.過去には,このような脳組織と脳腫瘍の生長解析学上の極端な差を利用して,分裂を抑制したり,または選択的に増殖中の細胞のみを殺す薬剤を用いれば,正常組織は特に傷つけず,腫瘍細胞だけを破壊することができると考えられた.
事実,今から10年以前にはmethotrexateを始めとするantimetabolitesの頸動脈注入療法や髄腔内投与等が悪性脳腫瘍の患者に試みられた31).結果的には,これらの治療法は失敗に終わったのであるが,臨床家がこの生長解析学上の利点を利用できなかった原因が大きく2つ存在する.その第1は,腫瘍細胞はすべて分裂を繰返しているわけではなく,その一部しか常時は分裂を繰返していないこと9).しかも分裂していない腫瘍細胞も,ときに応じて分裂を始められるという事実.第2は脳組織には血液脳関門があって,もちろん腫瘍本体にはそのような関門がないにしても,薬剤の組織への移行がなんらかの形で阻害されているということである14,15).
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