コーヒーブレイク
懐かしい十二指腸貧血
寺田 秀夫
1,2
1聖路加国際病院内科
2昭和大学内科
pp.1004
発行日 2003年9月15日
Published Date 2003/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100979
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- 文献概要
約50年前母校の内科に入局した最初の2年間位はほとんど毎日一般検査,血液検査,生化学検査,細菌検査などに明け暮れ,特に教授回診の前日などは自分の受けもっている患者さんの検査で夜遅くまで研究室でピペットやフラスコを握っていた若かったころが懐かしく思い出される.またそのころ外来を訪れる貧血の患者も多く,そのほとんどが十二指腸貧血(Ancylostoma anemia)であり,直接塗抹法と浮遊法で鉤虫(十二指腸虫)Ancylostoma duodenaleの虫卵を見つけることは毎日の行事のように思われた.無色の楕円型で2~4個の分裂球を含む虫卵の形態は,半世紀も過ぎた現在も鮮明な記憶として残っている.十二指腸貧血(鉤虫貧血)がなぜ多かったのか,その理由としては第二次大戦後のはなはだ不良な衛生状況と病院の背後に広い越後平野があり,農家の患者が外来を多く訪れたためであろう.
さて当時はわが国の鉄欠乏性貧血のなかで,この十二指腸貧血(Ancylostoma anemia,Hookworm anemia)が主要な貧血であったことは間違いない事実であり,血液学の古い専門書ではこの貧血についてかなりの頁数にわたって記述している点からも明らかである.
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