扉
医師過剰時代と自治医科大学
佐藤 文明
1
1自治医科大学脳神経外科
pp.689-690
発行日 1980年8月10日
Published Date 1980/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436201186
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「お宅の大学は欠陥大学だね」といわれたことがある.卒業生が残らないからである.自治医科大学は各自治体との約束によって,卒業生を卒後直ちに各都道府県にお返しすることになっている.卒業生は9年間出身県の地域医療に従事する契約があるから,9年間は,建て前の上では母校に帰ることができない.9年後に母校に帰ってきた時,優れた教育者,研究者になれるかという疑問が残る.
われわれの後継者は,さしあたりよそ様が育てて下さった卒業生に来ていただくということになる.米作農家がせっかく作った米を全部売って,自分が食べるために米を買うようなものである.ササニシキを売りはらって,等外米を買うこともあるし,その逆のこともあるから,悪いとは言い切れないが,せっかく育てたものをすべて手離すのは何ともさびしいことである.良い面は,私の教室でもいろいろな大学の卒業生が切磋琢磨しているし,私としても教えられることが多い.しかし地域医療に専念する医師を育てるには,やはり僻地医療を経験した自治医大の卒業生も何人かは帰ってきて後輩を指導してくれることが望ましい.
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