扉
秀でたるものは義務(つとめ)多し
井奥 匡彦
1
1近畿大学脳神経外科
pp.1023-1024
発行日 1976年11月10日
Published Date 1976/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436200531
- 有料閲覧
- 文献概要
『秀でたるものは義務(つとめ)多し』これは中世の騎士道精神のなかにうたわれた言葉である.そしてこの言葉が,幾多の有名な文豪によって小説の中にもとり入れられ,あるときには厳粛な,あるときには浪漫的な,そしてあるときには風刺的な場面にも用いられているのをよくみかける.
義務(つとめ)というのは感情ではない.なすべきことをするというのは好きなことをするということではない.人間として優れ,才知にも卓越した男子が,あるときには国の為に平然として死地に赴かねばならぬこともあり,あるときには1人の女性の為に生命を献げることもあり得るという,当時の騎士の信条をうたったものである.文明が開け人間感情も極めて複雑化し,騎士の地位や身分を論じる世の中ではなくなった今日ではあるが,いつの世においても,優れた人間性の涵養に心掛けるならば,当然その時代に即応した形でこの言葉は生きていなければならない.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.