巻頭言
総合病院につとめる精神科医から
冨永 一
1
1国立東京第1病院精神科
pp.294-295
発行日 1971年4月15日
Published Date 1971/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201725
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大学病院の精神科に13年,ついで総合病院の精神科に19年つとめ,単科の精神病院にはつとめた経験がない。それで,これを書いている。近頃のことばでいえば,「これではまるで危機感がない,どういう点を踏まえて立っているのか,偏見にみちてとらえられているという告発をうけとめよ」などといわれるかとおもう。もちろん私共精神科医自身は,日常の行動について深刻に反省を重ねるべきであると思う。治療が進んだといったところで,薬の副作用で患者をぼやっとさせておいて,その間に自然に治るのを待っているというだけのことだと,西丸四方先輩はいわれる。悲しいかな,いってみればその通りかも知れないが,何といっても目前の私共の最大の関心事は,患者やその家族に,私共が何かしてあげられるとすれば,総合病院で精神科医としてどのように働けばよいかということである。
精神科医の大部分が単科の精神病院,それもその8割が私立の病院に,フルタイムで或はパートタイマーとしてつとめていて,現在日本の精神科医療をおしすすめている中心が,実はここにあるという事実。そして,私共のように総合病院につとめる者の数も,その精神科病床数も,ふえているとはいいながら,問題にならぬくらい少ないという状況がある。
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